カルダノの「サイドチェーン・ツールキット」【日本語訳】

カルダノ情報

2023年1月12日に公開された、「カルダノのサイドチェーン・ツールキット」に関するIOGの発表を、どこよりもわかりやすい日本語訳で配信します! カルダノのサイドチェーンの構築を用意にするツールキットにより、カルダノのDAppsがさらに拡大することになりそうです!

以下、IOG記事の翻訳

Input Output Global(IOG)は、カルダノの強固な基盤を利用して、カスタム・サイドチェーンを構築するための「ツールキット」を構築する専門エンジニアのチームを結成しました。同チームは既に、このツールキットのコンセプト実証としてイーサリアム仮想マシン(EVM)互換のサイドチェーンをパブリック・テストネットにて構築しています。
サイドチェーンのよって、メインチェーンの安定性や安全性を損なうことなく、カルダノをより拡張可能でスケーラブルにすることが可能になります。

サイドチェーンによる、カルダノの拡張

カルダノは「第3世代」のブロックチェーンであり、学術研究に基づいて、数学的な正しさを証明するためにHaskellで書かれています。
コンセンサス・プロトコル「ウロボロス」の分散制、安全性、スケーラビリティは、5年以上にもわたって数千にも及ぶステークプール百万以上のウォレットアドレスというスケールとボリュームにおいて証明されています。
カルダノネットワークは、2017年の開始以来、障害なく稼働しています。
分散化と相互運用性は、ブロックチェーンの未来にとって重要な要素です。この分散化と相互運用制があることによって、いかなる個人または団体もブロックチェーンを制御したり、単一のエコシステムによって制限されたりすることを回避することができるのです。
エンジニアリングと社会の両方の観点から、カルダノを成長させるためには、多くのアプリケーションとコミュニティが独自の主権と設計を選択できるようにする必要があります。
この相互運用可能な環境を実現するために、IOGはサイドチェーンのファミリーを構築できるツールキットの作成に取り組んできました。このツールキットを使用することで、誰でもカルダノのセキュリティとインフラを活用し、それぞれのミッションに特化したサイドチェーンを作り始めることができます。
(テストネットで構築された)EVMサイドチェーンは、このコンセプトの実現可能性を証明しています。この結果はすべてカルダノコミュニティと共有され、完全にオープンソースとなる予定です。
その第一段階として、2022年11月下旬にエディンバラで開催されたIO ScotFestにおいて、EVMアプリケーションのデモを行いました。
今日、私たちは正式な文書の最初の一部を利用できるようにします。

ツールキットの詳細

図1 サイドチェーン・ツールキットの内容

 サイドチェーンを簡単に説明すると、「あるメインチェーンに依存し、接続されているブロックチェーン」のことです。
ツールキットを使用することで、サイドチェーンはそれ自身のコンセンサスアルゴリズムと機能を持つことができます。サイドチェーンはブリッジを通じてメインチェーンに接続され、チェーン間の資産移転が可能となります。ブロックのファイナリティは、メインチェーンのセキュリティに依存するコンセンサスメカニズムによって決定されます。

ツールキットは、以下のもので構成されています。

メインチェーンのPlutusスクリプト
スクリプトはカルダノのメインチェーン上で実行され、安全なクロスチェーン取引とトークン移動を可能にするほか、サイドチェーンのトークンやミンティングポリシーを有効化します。

チェーンフォロワー
チェーンフォロワーは、サイドチェーンを支配するメインチェーンのデータとイベントを追跡します。v1のツールキットのリリースにおいては「cardano db-sync instance」のことです。

サイドチェーンモジュール
このモジュールはサイドチェーンクライアントの一部です。メインチェーンのデータを解釈し、必要となる台帳への適応を実行します。

また、ツールキットには、カルダノのサイドチェーンの紹介とガイドを含む技術仕様書が付属しています。ツールキットのビルディングブロックは、開発者に力を与えるように設計されています。
その例として、いくつか紹介しましょう。

・メインチェーンとカスタムサイドチェーンの間でデータやアセットを移動させる
・様々なコンセンサスプロトコル、元帳のルール、言語をサポート
・安全なサイドチェーンの立ち上げ
・安全なスモールチェーン
・実験、インキュベーション、研究

EVMサイドチェーンアプリケーションはまだ監査中で、2023年1月後半にパブリックテストネットとして利用できるようになる予定です。
開発者は、Solidityアプリケーションをいくつか動かして試すことで、その可能性を感じることができるようになるでしょう。EVMサイドチェーンを使用するDApp開発者は、データがサイドチェーンに移動する前に、メインチェーンで最終的な実行が認められる必要がある点に注意してください。

サイドチェーンツールキットのコンポーネントを利用する

ブロックチェーン開発者、分散型アプリケーション(DApp)開発者、ステークプール運営者(SPO)、DAppユーザーは、いずれもカスタムサイドチェーンの恩恵を受けることができます。
開発者はツールキットを使って、カルダノのセキュリティと非中央集権に基づく特定のユースケースに対応したブロックチェーンを作成することができます。
この方法で作成されたブロックチェーンは、既存のSPOコミュニティのサポートを活用し、カルダノユーザーのコミュニティから利益を得ることができます。
DApp開発者にとっては、カスタムサイドチェーンは相互運用性、スケーラビリティ、テスト容易性、互換性においてメリットがあります。

相互運用性メインチェーンとサイドチェーンの間の最も基本的なコミュニケーションは、アセットの交換です。アセットがサイドチェーンに転送されてもその性質は維持されるため、同じように簡単に転送し直すことができます。ブリッジのメカニズムは、このコミュニケーションを可能にします。双方のチェーンが安全である限り、その安全性は双方向の転送にも引き継がれます。
メインチェーンとサイドチェーンの間の通信により、それぞれのコンセンサス・プロトコルやブロック形式を維持しながらも連携することができ、より幅広いアプリケーションを開くことができます。

スケーラビリティ

プロジェクトマネージャーが「良い、速い、安い」の中から好きな選択肢を選ぶように、ブロックチェーンも分散化、セキュリティ、スケーラビリティという3つの競合する目的から選択することができます。
サイドチェーンは、アプリケーションのドメインに特化できるため、トランザクションをより早く完了させることができ、メインチェーンからこの負荷を軽減することができます。サイドチェーンのスケーラビリティ向上はセキュリティを犠牲にすることなく実現でき、分散化に影響を与える必要もありません。

テスト容易性
開発者は、専用のサイドチェーン上でパイロットDAppsをテストすることができるようになります。もしチェーンへのインターフェースの再起動や修正を必要とする障害が発生した場合、メインチェーンではなくサイドチェーンのみが影響を受けます。
このフェーズは、実験的な機能や新しいアプリケーションのためのテストネット運用と、完全なメインネットのリリースの間の中間段階として機能します。

互換性
サイドチェーンは、既存のチェーンと同じアプリケーションプログラムインターフェース(API)を公開し、カルダノのコンセンサスプロトコルのセキュリティと効率性を利用することができます。例えば、Cardano EVMサイドチェーンは、マイナーを必要としないSolidityの実行環境を提供しますが、Ethereum JSON RPCメソッドはそのまま提供します。Ethereumのスマートコントラクトは、非常に低いガス代でそのまま実行することができます。

SPO向け情報
サイドチェーンは、SPOがサイドチェーンノードを運営することを決めた場合、そのプールがADAだけでなく、より多くのトークンを授与することを可能にします。これにより、SPOにチャンスを提供します。これらのサイドチェーン固有のトークンは多様な目的を果たすことができ、その結果、ネットワークに参加するデリゲーターを惹きつけることができます。
サイドチェーンでの報酬の設定方法によっては、サイドチェーンのブロック作成者は、ブロックを構築し、それを検証し、ネットワークのセキュリティに貢献することで、新しいトークンで報酬を得ることができます。
カルダノのSPOは誰でも、サイドチェーンのブロックの検証を行うことを選択できます。この場合、追加サービスを提供し、より多くのリソースを使用することで、追加収入としてのリワードを受けることができます。
SPOがサイドチェーンのブロックを検証することを選択した場合、追加のリソースを提供する必要があります。サイドチェーンを保存するためのディスクスペースが必要となり、さらにチェーンフォロワーとサイドチェーンノードの2つのプロセスを実行する必要があります。

DAppユーザー向け情報
チェーン間の相互運用性の向上、開発プロセスの簡素化、開発プラットフォームの増加、取引手数料の低減によって、DAppの数や種類が増える傾向があります。カルダノのサイドチェーンが増えるということは、革新的なブロックチェーンのデザイン、ユースケース、ステーク報酬の総額が増えることを意味し、より多くのSPOやデリゲータを惹きつける傾向があり、これが結果としてセキュリティの強化と分散化を確実にすることにつながります。これこそが、サイドチェーンのエコシステムの可能性なのです。

まとめ

サイドチェーンツールキットは、スケーリングフェーズであるBasho時代におけるカルダノのロードマップの最新の発表であり、より高いプログラム可能性、相互運用性、スケーラビリティを提供しています。サイドチェーンの開発は、分散性やセキュリティを低下させることなく、はるかに高いスループットを可能にすることで、カルダノのさらなる拡大への道を開きます。
ブロックチェーン開発者は、より簡単にカスタムサイドチェーンを作成することができます。最終的には、IOGはカルダノのサイドチェーン群やパートナーチェーン群が出現することを期待しています。
EVMサイドチェーンのパブリックテストネットは2023年1月にリリースされ、コミュニティはDAppsの実行、スマートコントラクトの作成、テスト環境のチェーン間でのトークンの移動ができるようになる予定です。
1月にリリースされるツールキットは、完全なソリューションではありません。ブリッジエクスペリエンス、SPO報酬メカニズム、セキュリティモデルなど、改善すべき既知の領域がいくつかあります。これらの領域はすべて、コミュニティとともに、注意深く着実にフィードバックし、考察や提案を求めて、協力しながら取り組んでいくことになります。改善すべき点はたくさんありますし、サイドチェーンの運営方法も多様です。
しかし、私たちがIOG社内で開発したものが機能の中核となり、一連のツールを構築し、コミュニティと協力してさらなる改善を行うための強固な基盤となることを期待しています。
さらなるドキュメントとチュートリアルビデオは順次公開予定です。
IOGのソーシャルメディアをフォローして、最新のアップデートをご覧ください。
サイドチェーンの技術仕様開発ドキュメントを読み、IOGの技術コミュニティのDiscordに参加して、さらに議論を深めてください。
近々、興味のある開発者のためのDiscordステージを開催しますので、IOGの開発者向けニュースレターに登録して、お知らせを受け取ってください。
商用およびパートナーシップに関するお問い合わせは、お問い合わせページからIOGにご連絡ください。

執筆者:Neil Burgess(IOGテクニカルライター)

記事原文はこちら↓
 IOG launches a toolkit for developing custom sidechains on Cardano

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