ヴォルテールに向けて：メインネットでの調査実験

カルダノのメインネットにおけるオンチェーン投票が、2023年5月15日から始まるエポックより、いよいよ開始されると発表されました！
今回のオンチェーン投票は、あくまで技術的な実験段階であり、投票の内容も意識調査という意味合いが強いですが、今後の「カルダノの真の分散化」に向けた大きな一歩となります。
歴史の1ページに立ち会うために、皆さんもぜひオンチェーン投票に注目しましょう！

本稿では、オンチェーン投票を前にカルダノ財団が公開した記事を日本語訳しています。今回の投票について詳しく説明しているので、SPOの方は必読、委任者の方も委任先のSPOの方の行動をチェックするためにぜひご一読ください☕️
【以下、翻訳】

カルダノにおける「オンチェーン投票」とは何か？

カルダノのようなパブリック・パーミッションレス・ブロックチェーンには、コミュニティ全体からの参加を受け入れるだけでなく、積極的に参加可能な、具体的なガバナンス・システムが必要です。
あるシステムを採用する前には、エコシステムのさまざまなメンバーに相談し、「将来のガバナンス・システムで何が起こるか？」を予測する議論を促すシステムにする必要があります。
カルダノ財団は、「メカニズムを事前にテストする」こと、そして「カルダノのエコシステムのすべてのメンバーを積極的に巻き込む方法でそれを行う」ことの重要性を知っています。

この精神に基づき、私たちはステークデリゲーター（委任者）とステークプールオペレーター（SPOs）を対象とした「投票実験」を開始しました。

最初のフェーズでは、現在の報酬とインセンティブのスキームに対する満足度を調査しました。潜在的な不完全性を考慮すると同時に、貢献やコラボレーションを促進するために、この最初のフェーズはテストネット環境で実施されました。そして、2023年5月10日（水）、再代表化エポックが終了とともに、投票も完了しました。

興味のある人は、AdastatのPreProd Testnet pollのダッシュボードや、CardanoscanのPreProd dashboard で結果を確認し、それぞれのステークプール運営者がどう投票したか確認してみてください。ダッシュボードを見ると、調査における有効なデータを取得できているものの、結果の数字自体は異なる方法でカウント＆整理されるため、非常にちぐはぐな結論になってしまっています。
例えば「（現在のパラメータ設定に）不満」の割合を見ると、デリゲーターごとに結果をグループ化した場合は「不満」という回答が圧倒的に多くなりますが、「プールまたはステーク値」で見ると、著しく減少しています。

ただし、データ解析は今回の実験の範囲に含まれません。カルダノ財団では、調査を企画し、設計し、組織することを目的としています。ヴォルテール期における分散型ガバナンスのフルセットに入るまでは、「どのパラメータを使い、どのように適用してデータを解釈するか」についての決定は、IOG、EMURGO、およびカルダノ財団自身の責任に委ねられます。今回のオンチェーン調査から得られた議論や洞察が、調査の適切な利用方法を示し、結果としてガバナンス参加のための強固なメカニズムの構築に役立つことを期待していますが、それでもこれは可能性を評価するための最初のステップにすぎません。

私たちがエコシステムとして、カルダノを純粋に改善し、より反発力のあるものし、分散型かつ効果的なオンチェーン調査のシステムを開発したいなら、様々な側面から慎重に物事を検討する必要があります。どのような質問をどのように投げかければよいのかも含めて、です。まさにこの理由から、カルダノ財団はオンチェーンフェーズの質問の内容と形式の両方を綿密に検討したのです。

二者択一の質問は、直接的なシンプルさが魅力かもしれませんが、「なぜ投票者がどちらかの方向に進んだのか」については、ほとんど知ることができません。
これは「好きな人が何人いるか、嫌いな人が何人いるか」を示すだけであり、結果から結論を導き出そうとする試みが複雑になってしまいます。

一方、多肢選択式の質問では、選択肢を増やし、意見分布の理解を深めることができますが、それでも解釈の妨げになる可能性があります。
この限界を超えるためには、多肢選択式の質問では、有権者に十分な選択肢を与えると同時に、それぞれの選択肢に何らかの根拠を持たせることが必要です。

最終的に財団は、6つの選択肢のうち4つが2つの異なる要素に対応する、わかりやすい多肢選択式質問を採用しました：

Q：2023年第3四半期以降、どのセットアップを導入するのが望ましいですか？

・kを500、最小プール固定費を340ADAで維持する。
・kを500、最小プール固定費を170ADAに半減させる。
・kを1000に増やし、最小プール固定費を340ADAに維持する。
・kを1000に増やし、最小プール固定費を170ADAに半減させる。
・棄権を希望する。
・上記のどれでもない。

メインネットにおけるガバナンスの重要な側面に関する将来の投票を予見する方法として、エコシステム内でしばしば議論されるテーマ、すなわち「kパラメータ（プール飽和点の設定値）」と「最小プールコストの絶対値のADA値（最小固定費）」との相互作用を選びました。

もし、ほんの一握りのステークプールが委任ステーク量を集中させてしまえば、システムを効果的にコントロールし中央集権的なネットワークに変えてしまうでしょう。「真の分散化」を実現するためには、少数のプールが大多数の資金を集約する状況を阻止することが不可欠となります。
そこで、あるプールへのステーク委任が一定額を超えると、そのプールの報酬が自動的に減少する仕組みが導入されました。このメカニズムを有効にするのが「kパラメータ」です。この式で、「k値」は、同サイズのプールに委任した人に対し同様の額の報酬を与えられる望ましい数を表します。

「k値」は現在、500プールに設定されています。一方、「最小プール固定費」は「340ADA」となっており、ステーク委任者に報酬を分配する前に、各ステークプールの報酬から各エポックごとに差し引かれ、プールの運営報酬となっています。

「kパラメータ」と「最低プール固定費」に質問を絞ることで、ネットワークの分散化に直接影響する基本的な問題に対するエコシステムのスタンスをよりよく認識することができます。
同様に、「kパラメータ」と「最低プール固定費」の両方について、具体的でありながら異なる２つの値のオプションを提供することで、自由形式の質問による広範で、多数ではない可能性のある変動を抑制しつつ、「エコシステムがこれらのパラメータの値を変更したいか？」だけでなく、「変更するとしたらどの程度か？」を理解するのに役立つ、有益な調査を作成することができました。

最後に、棄権（depict absention）を示すオプションと、「棄権を望まず提案された値に同意しない（disagree with the proposed values）」という追加オプションを導入することで、他の４つの可能性の限界に対する答えにも配慮しています。

オンチェーン投票は、2023年5月15日（月）の新エポック開始後にメインネットでライブ配信される予定です。

テストネットの段階でSPOからよく指摘されたのは、投票期間を延長する必要性でした。そこで、財団は第２フェーズのスケジュールを変更しました。質問が公表された後、SPOは次のエポックの終わりまで投票することができます。2つのエポックを追加することで、ステーク委任者はダッシュボードを参照し、「SPOがどのように投票したか」を確認し、結果を検討し、ステークを他のSPOに再委任するかどうかを決定する時間ができます。

その後、カルダノ財団は結果をスナップショットし、報告書を作成します。

オンチェーン投票は、カルダノコミュニティ全体に対応するために特別に設計されたもので、様々な関係者の幅広い関与があってこそ重要な結論につなげることができます。

財団は、SPOが投票することで、他のADA保有者が、委任したプールに責任を持つステークプール運営者の行動を検討し、SPOの態度に同意できない場合は委任を再考することで、全員がそれに参加することを望んでいます。さらに、カルダノ財団は、メインネット上でライブになったこの実験が、新しい議論、貢献、コラボレーションのきっかけになることを望んでいます。

ヴォルテール期とは、積極的な参加と同時に、情報を得た上で意識的に複数のレベルで参加することを意味します。

真の自立型、真の分散型ネットワークに向かう道には、すべての人の声が必要なのです。

オリジナルの記事はこちら→Entering Voltaire: poll experiment live on mainnet