カルダノは、2025年1月30日に実行された「Plominハードフォーク」により、「完全な自立分散型ガバナンス」を実装したブロックチェーンとなりました。
カルダノに「分散型ガバナンス」が実装されたことで、これまで「チャールズ・ホスキンソン、IOG、カルダノ財団、エマーゴ」で運営(ガバナンス)されていたカルダノが、「有志団体とホルダー」というコミュニティによって運営されることになりました。
新たなカルダノのガバナンスの仕組みはこちら→DRepってなに? カルダノのガバナンス総まとめ
完全な移行を遂げた「カルダノの新たなガバナンスモデル」はもともと、カルダノ改善提案「CIP-1694」をもとに構築され、歴史的にも極めて実験的な「流動民主主義」という新たな民主主義制度をベースとしています。
本校では、この新たなカルダノのガバナンス制度が設計された背景と、今後予測される未来について解説していきます。
カルダノのガバナンス基盤「CIP-1694」とは?
この「CIP-1694」は、カルダノの分散化に向けた最終フェーズに向けた「Cardano Improvement Proposal(設計案)」の一つです。
カルダノのブロックチェーン運営は、「ブロック生成」と「バージョンアップ」に関して、世界中の3000を超えるステークプールが行っており、ブロックチェーン運営についての分散化は早くから行われていました。
一方で、2024年初頭までは「バージョンアップ」や「ハードフォーク」などのソフトウェア開発面や大幅なネットワーク変更は、IOG、カルダノ財団、EMURGOの創業3団体が所持するキーが必要となっており、ガバナンスにおける分散化は次のフェーズとして進められてきました。
2024年9月2日に実行された「Changハードフォーク」によって、カルダノには「CIP-1694」を基盤とした、「分散型ガバナンス」が導入されました。これにより、この3団体が管理していたプロトコル変更に関するキーをカルダノコミュニティに手渡され、翌年1月30日に実行された「Plomin ハードフォーク」によって、完全なオンチェーン投票によるガバナンスへの移行が完了しました。
カルダノのガバナンスについては、本サイトの記事でまとめていますが、なぜ、カルダノのガバナンスはこのような形になったのでしょうか?
カルダノのガバナンスモデルを紐解く鍵となる「CIP-1694」は、「カルダノをどのようにしてコミュニティ運営していくか?」という観点で執筆された改善案であり、「カルダノの新ガバナンス」の設計図と言えます。
本校では、「CIP-1694」によって提案された、新たな「流動民主主義」というシステムを紐解きながら、「真の分散型ガバナンスとは何か?」について解説していきます。
カルダノのガバナンスモデル「CIP-1694」とは?

CIP-1694の案では、「流動民主主義(Liquid Democracy)」をベースとした民主主義体制で運営されることが想定されています。
ここではまず、CIP-1694での運営手順について簡単におさらいしましょう。
このCIP(カルダノ改善案)では、以下のようなフローでプロトコル変更が実施されることが想定されています。
①有志が、カルダノの「プロトコル変更案(ガバナンスアクション)」を提案
②憲法委員会が、その案がルール(カルダノ憲法)に則っているかを判定
③変更案のオンチェーン投票を開始
④自分で投票、もしくはdRep(委任代表者)に投票。加えて、SPOが投票
⑤その結果によって可否を決定
ADAホルダーの皆さんは、④のプロセスで、dRepやSPOに自分のステークを委任することで、間接的に投票に参加する仕組みとなっています。
CIP-1694時代には、特定の代表者して運営・管理するのではなく、「改善提案ごと」に投票が行われ、その都度、dRepやSPO、ホルダーが投票に参加する、というスタイルとなっています。
詳しくはこちら→
DRepってなに? カルダノのガバナンス総まとめ
カルダノの「CIP-1694」とは? 解説記事を日本語で読む
カルダノのガバナンス、CIP-1694に向けて【全文翻訳】
カルダノが導入した、リアルタイム投票と「流動民主主義」
この「流動民主主義(Liquid Democracy)」は、実は独自のアイデアではなく、もともと政治における民主主義の改善案として研究されている考え方であり、CIPはこの考え方を採用したものです。
現在、日本ではほとんど語られていませんが、イエール大学の助教授として知られる成田悠輔氏がインタビューの中で紹介している記事などが見られます。(この記事では「液体民主主義」と訳されていますが、「そもそも液体ではない」「本質的は意思決定の流動性にある」「決まった訳語が定着していない」という理由で「流動民主主義」としています)。
その歴史は意外と古く、1884年に『不思議の国のアリス』の作者として知られるルイス・キャロル(本名チャールズ・ドジソンとして発表)は、『議会代表の原理(The Principles of Parliamentary Representation)』の中で、「他動的投票」あるいは「流動的投票」という概念を発表したことが起源とされています。

実際には新しい仕組みではない「流動民主主義」ですが、なぜ、現在まで実装されることがなかったのでしょうか?
この理由は、これまで実現されてきた民主主義システムと合わせて考えてみると明らかになります。
【直接民主主義 Direct Democracy】

民主主義の最も基本的なシステムで、全ての意思決定を多数決で決める方式です。古代ギリシャなどで知られているのが有名です。一般企業においても、小規模な部会などではこのシステムで多数決を取ることも多く、現代の社会生活においても多くの人が経験したことがあるでしょう。家族や友人同士で外食や旅行の行き先を決めたりする際にもよく使われますね。
しかし、それが現代国家のような大きな組織においては、無数の意思決定を常に全員参加の投票で決めることは非常に膨大な労力とコストがかかります。国家単位のような規模の大きい組織での運用では、参加者のスケジュール調整や労力などが膨大にかかるため、デメリットが大きいという問題があります。
【代議制民主主義 Delegative Democracy】

小規模な選挙などで代表者を決め、決定された代表者たちが参加して意思決定を行う仕組みです(間接民主主義、もしくは委任制民主主義とも)。
現在多くの国家や大規模組織で採用されているシステムで、あらかじめグループの運営者を投票で決めているため、参加者の意思も反映可能でありながら、直接民主主義のような負担を軽減することができます。
大きな組織において効率的に意思決定を行えるため、日本をはじめ数多くの民主主義国家でこの仕組みが採用されています。
大きな組織におけるメリットが大きい一方で、「一度代表に決まれば、投票者のチェックが行き届かない」というデメリットがあります。日本など多くの同システム採用国では、政治家による汚職問題が数多く取り沙汰されており、「任期中(数年間の例が多い)には何をやっても制裁されにくい」という状況が引き起こされる懸念があります。
これに対して、流動民主主義は次のような仕組みです。
【流動民主主義 Liquid Democracy】
「直接投票」と「動的代表への投票」を組み合わせて意思決定を行うシステムで、意思決定においては直接民主主義と同様に「各議題ごと」に投票を行う仕組みです。
投票の際は、自ら投票をするか、「動的代表」へ投票することを選択できるという仕組みを採用し、いつでも委任を解除・変更することができます。この「動的代表」は委任代表者であるものの、委任民主主義とは異なり任期はなく、各議題ごとに行われる投票において、委任者に代わって投票を行います。
これにより、直接民主主義のように「全ての意思決定に参加し投票する」という負担を軽減しつつ、代議制民主主義のような「代議士の汚職などのトラブル」があった場合に、すぐに委任を変更することで権力を取り上げることができます。
このように、流動民主主義は「直接民主主義における参加コスト」と「代議制民主主義における汚職問題」などのデメリットを緩和し、より民意を反映しやすく効率的な組織運営が可能になることが期待されています。
代議制民主主義の「コントロール不全」リスク
前述の通り、直接民主主義(Direct Democracy)では、「意思決定に手間がかかる」「その議題に詳しくない一般人は、有効な意思決定ができない」という点があります。
その改善策として現在も多くの国で採用されている代議制民主主義(Delegative Democracy)では、「国会議員や大統領を投票で決める」仕組みです。数多くの意思決定を代表者が行うことで、選挙の手間やコストを削減することができます。
この仕組みは一見すると民主主義のように見えますが、「当選者が、常にグループの意志に沿って意思決定する保証はない」というリスクがあります。
20世紀初頭の政治学者ロバート・ミケルスは、1911年に著した著書『Political Parties(政党)』の中で、「ほとんどの代議制民主主義は、少数制支配や政党主義に向かって悪化する」と論じていたそうです。簡単に言えば、「少数のリーダーだけで政治が行われたり、一部の政党だけが権力を掌握する方向に向かう」ということです。
これは20世紀初頭にすでに指摘されていた問題点ですが、この一文だけですでに納得してしまう人も多いのではないでしょうか。
実際、代議制民主主義を採用した多くの国家で、このような問題に直面していると指摘ができます。
⚫︎アメリカ→共和党と民主党の二大政党が選挙によって入れ替わり、選挙によって政治的な立場が両極端となっており、政権交代のたびに全く逆の政策が主流となる場合がある
⚫︎中国→対抗勢力が淘汰されることで共産党の一党独裁となり、共産党に反対する勢力は処罰対象。実質的に民主主義が崩壊している
⚫︎日本→選挙で当選した議員が公約を反故にし、全く正反対な政策を打ち出すものの、任期が継続しているため解任させることができない
このように、代議制民主主義は「誰がリーダーとなるか決める」という選挙ができるものの、決まったリーダーが国民が支持する行為を行うかは不透明です。
特に、多くの独裁国家では、選挙で大きく勝利した政党が法律を捻じ曲げ、自分たちへの反抗勢力を法的・政治的に排除するシステムを構築しようと目指す傾向があります。これは現在の日本でも同様のことが言えるでしょう。

このリスクの最たるものが、ナチスドイツです。独裁者として有名なアドルフ・ヒトラーも、第一次世界大戦の敗戦と世界恐慌によって低迷したドイツにおいて、圧倒的な得票数を得て一大政党となりました。その後の顛末は皆さんもご存知の通りですね。
ナチスは「選挙に大勝利した」ことを大義名分として反対勢力を苛烈に攻撃し、独裁政権の構築に成功しました。
つまり、代議制民主主義は常に独裁政治への危険をはらんでおり、バランスが崩れると民主主義が崩壊するという問題点があるのです。
流動民主主義のメリットとデメリットは?
このように代議制民主主義は、バランスが崩れることで民主主義が崩壊するリスクがあるというデメリットがあります。
流動民主主義は、このような代議制民主主義の問題を解消すべく考案された仕組みです。まずは、この流動民主主義のメリットから見ていきましょう。
①各議題(意思決定)の選挙で、常に投票者の意思が反映できる
流動民主主義では、直接民主主義のように「議題ごと(意思決定ごと)に選挙を行う」仕組みです。
投票者は「直接投票」も可能でありながら、「動的代表者を選ぶ」ことも選択でき、自分では判断が難しい議題でも委任者を選ぶことで有意義な投票が可能になります。
②動的代表者も各議題において審判が下る
動的代表者の任期は「その議題のみ」であり、その後に委任者の意思にそぐわない判断をした場合は、次の投票の際に別の動的代表者を選ぶことが可能です。これにより、動的代表者のスピード感のある不信任が可能になります。
このように流動民主主義では、代議制民主主義のデメリットであった「投票者の意思に反した決定」や「任期中の権力集中」を回避することが可能になります。
流動性民主主義も、完璧ではない
一方で、流動民主主義には次のようなデメリットも存在します。
①議題が多くなると処理しきれない?
「意思決定の煩雑さ」は、直接民主主義と同じデメリットです。直接民主主義と同様に、膨大な意思決定を選挙で行うことは組織のスピード感を下げてしまうため、組織運営が非効率的になってしまいます。
→この問題については、近年のIT技術を駆使することで可能という反論もあり、流動民主主義においてはほとんどの場合、インターネット投票を前提として議論が進んでいます。
しかし、インターネット投票を前提としても、次のような批判があります。これに対する反論と一緒に紹介します。
②情報強者しか参加できない?
インターネット投票では、IT知識のない人が参加できないため、多くの意見を収集することができない、という批判です。しかし、これについては、インターネット世代が主流となる将来においては解消される可能性もあります。
③専門的な知識のあるリーダーに任せた方が効率的?
専門的知識がない人が意思決定に参加することで、客観的に「正しくない判断」への投票が多くなるリスクが生じるという批判です。独裁政治においても、シンガポールやUAEなど成功している国もあるため、このような批判もあると思います。しかし、確率論的には独裁体制が成功する可能性は世界的に見ても低いことは明らかです。さらに、日本の代議制民主主義を見ても「専門性がない人も当選する」という事例は多数散見されており、流動民主主義特有のリスクとは言えないでしょう。かえって「専門性がある人物」が権力を集約するリスクを防げると考えることもできます。
④ITベースだと、ハッキングや改ざんのリスクがある?
ITベースの投票となると、やはりシステム障害やハッキングのリスクが付き纏います。特に問題なのが「誰がシステムを運営するのか」によって、運営勢力の思惑によって投票結果が操作されるおそれがあります。もちろん、反抗勢力によるハッキングでも同様のリスクが伴います。
2020年のアメリカ大統領選挙において、インターネット投票が採用されましたが、投票の不正疑惑などが巻き起こり大きな混乱のタネとなったことも記憶に新しいところです。
→「運営勢力による改ざん」については、完全に分散化されたネットワークであればリスク回避が可能です。次の「ハッキングリスク」については、ハッキングが極めて難しい仕組みを活用することが大切です。
分散化運営されハッキングに極めて強い仕組み…、つまり、ブロックチェーンによってこのリスクは解決できると思われます。
民主主義システムの特徴とメリット&デメリットまとめ
項目 | 直接民主主義 | 代議制民主主義 | 流動民主主義 |
---|---|---|---|
特徴 | 全ての意思決定を市民の直接投票で決定 | 代表者を選挙で決め、代表者が意思決定を行う | 市民は直接投票または信頼する代表に委任できる |
主な運用例 | 古代ギリシャの都市国家、小規模組織 | 日本、アメリカ、イギリスなど現代国家の多く | オンラインプラットフォームなど |
メリット | 参加者の意思が直接反映される 代表者による汚職のリスクが低い |
組織運営の効率化 市民が全ての議題に関与しなくてもよい |
直接と代議制の長所を併せ持つ 必要に応じて専門家などに委任できる |
デメリット | すべての意思決定参加する負担が大きい 投票のコストと時間が膨大 |
代表者が投票者の意見を無視する可能性 汚職や政治家の資質の問題が発生しやすい |
代表者を放置すると代議制と同じことになる 実際の導入例が少ない |
適した環境 | 小規模なコミュニティ、地方自治体の住民投票 | 国家レベル、広範な地域社会 | オンラインコミュニティ、専門的な議題を扱う団体 |
「CIP-1694は、流動民主主義をベースに、カルダノの特徴に合わせて調整したもの」と考えることができそうです。
CIP-1694は「次世代の民主主義へのチャレンジ」である
ここまで情報を整理していくことで、カルダノに流動民主主義システムが採用された理由も明らかになります。
①議題は「カルダノの運営」に限定されている
今回のCIP-1694では、カルダノのプロトコルアップデートに関する議題を議論・決定するものであり、議題となる項目は「カルダノ憲法」に則ったものに限定されています。有識者が論文を査読するなどのプロセスなども考慮されており、極めて重要な変更要件だけを投票で決めます。そのため、投票機会が多すぎるという心配はないと考えられます。
②情報強者じゃなくても参加できる
カルダノのCIP-1694ということで、やはり一般の方には壁があると考えられます。カルダノのプロトコルに関する議論のため、ここは情報強者だけが参加する、ということでもあまり問題ない、という意見もあると思います。
→しかし、カルダノを多くの人に利用してもらうためには、「判断の多様性」も必要です。あらゆる種類のニーズや意見が交わることで、今後100年続くためのプロトコル改善が可能になります。CIP-1694では、WebサイトやdAppsを活用したわかりやすいUIの提供に励んでおり、プログラミング未経験者でも参加が可能になる見込みです。
③専門家の改善案を投票で決める方式
CIP-1694においては、有識者が作成した「CIP(カルダノ改善案)」に対して、その是非を投票で決める方式です。CIPは有識者たちの審査や査読が入るため、素人の出鱈目な案については投票になる前に却下されます。
採用された議題は、発案者やその協力者たちの手で開発されるため、未経験者のCIPが採用されるリスクを低減しています。
④L1投票のため、ハッキング耐性や不正リスクは極小
CIP-1694は、カルダノのメインチェーン(L1)で行われる運営手段です。投票結果はブロックチェーンに刻まれるため公開されており、L1のハッキングについては、「やれるものならやってみろ」というレベルで堅牢さが証明されています。
そもそもハッキングが可能であれば、投票よりADA盗難した方がメリットが大きいでしょう…。
ちなみに、流動民主主義による意思決定プラットフォームの先駆者として「LiquidFeedback」という商業サービスがありますが、最新のver4.0ではこちらもブロックチェーン基盤となっているようです。
このように整理して考えると、カルダノの「真の分散化」を目指すプロセスとして「流動民主主義」を採用したことは極めて自然だったと言えるかもしれません。
透明性が高く、非常に堅牢なブロックチェーンがあるからこそ、流動民主主義の利点を生かすことが可能になると言えます。
むしろ「流動民主主義を成功させるために、カルダノを利用した」という、逆転の見方もできてしまうのではないでしょうか?
カルダノの「流動民主主義」におけるリスクとは?
しかし、CIP-1694においても、流動民主主義における弱みを完全に克服できていない可能性も考慮する必要があります。
⚫︎一部の「有識者グループ」による階級主義が起きるリスク
まず懸念されるのが、議題の正当性を監視する「CIP編集者」と「カルダノ憲法委員会」の官僚的リスクです。CIP-1694においても、まず議題を投票という叩き台に出すための壁があり、これらが自分たちの思惑によって影響力を高めるようなことがあれば、運営におけるリスクとなる可能性があります。
これに対しては、「ADAホルダーは憲法委員会の不信任」を投票することで抑止力とする予定としています。
⚫︎人気者のdRepが得票を独り占めするリスク
憲法委員会などは、投票による抑止力が機能すれば問題なさそうですが、最も強く懸念されるべきなのが、「インフルエンサー的なDRep」による投票独占です。
カルダノの開発資金支援プロジェクト「カタリスト」でも散見されますが、ADAホルダーに特別な影響力をもつ人物がdRepとして参加することで、多くの得票を得て権力を行使する懸念です。
これは、「Plominハードフォーク」が実行された2025年1月時点においても顕著な問題で、日本で行われたプレセールで大量のADAを保持した「プレ組」が、日本人DRepに委任を集中させたことで、トップ5の日系DRepが全体の30%の投票力を持つ結果となっています。
⚫︎参加者が無関心で、チェック機能が働かないリスク
「CIP-1694」における流動性民主主義の最大のメリットは、「常に委任者が代表者をチェックする」ところにあります。これにより、不審な投票をしたDRepに対して委任を解除することで暴走を阻止することができます。しかし逆に言えば、委任者が無関心であれば代議制と同様に「暴走」する危険性があります。委任者がしっかりガバナンスをチェックしなければ、流動民主主義であっても腐敗は避けられません。
「カルダノ予算」など少数のインフルエンサーの利害に関係する議題に関する投票において、その影響力によって投票操作の懸念があります。代議制民主主義においても「タレント議員」問題が常態化していますが、流動民主主義においても「インフルエンサーDRep」に対するリスクの払拭は難しいと考えられます。
民主主義の最大リスクは「参加者」である
ここで、ナチスドイツに対抗したイギリスのウィンストン・チャーチル首相の言葉を紹介します。

democracy is the worst form of Government except for all those other forms that have been tried from time to time.…
——民主主義は、これまで試みられてきた他のすべての形態を除けば、最低の政治形態である……
これは私がイギリスの大学で国際政治を学んでいた時、政治学の講義で最初に教授に言われて衝撃を受けた、チャーチルの言葉です。
イギリスのジョークでは「下げて上げる」「上げて下げる」のが形式美となっており、普通に聞くと「最低だけど他にないよね」という自虐的なブリティッシュジョーク、という印象ではあります。
しかし、うがって解釈するなら「より良い民主主義の必要性」を訴えた苦言だったと考えることもできるでしょう。
現在の日本においても、自民党の支持率は20%台まで下落していながら、数年前の選挙で大きく勝利したことが原因で、今でも彼らを権力の座から引きずり下ろすことができません。その結果、その暴走を止めることができなくなっています。
アメリカにおいても、昨年の大統領選によってトランプ大統領が返り咲くまで、LGBTや窃盗問題、不当な暗号通貨弾圧など、通常であれば疑問に問われる法律が施行され多くの混乱が起きていました。議会の多数派は共和党でしたが、対立する民主党のバイデン大統領を失脚させるほどの議席数はなく、疑惑の行政が続いていました。
2025年1月にトランプ大統領が再任したことで、これら全ての歪みは修正に向かっていますが、これも代議制民主主義における極端な政治の方向転換ともいえます。
現在、世界の多くの国で施行されている民主主義の制度では、一度選挙で勝利したリーダーによる「権力の暴走」を食い止めることは極めて難しく、成功するとしても時間を要してしまうことがわかります。
そこで考案されたのが「流動民主主義(Liquid Democracy)」という考え方であり、ブロックチェーンは、この仕組みを現実化する必要案件だったと言うことができるかもしれません。
その一方で、「バイデンも自民党も、結局、選んだのは国民である」ことも否定し難い事実です。
代議制民主主義においても、国民の多数派が賢明であれば、現状のような混迷が起きる前に彼らの政権奪取を阻止できていたはずです。
スキルのないタレント議員が当選するのは世界的にも珍しくはなく、流動民主主義においても同様のDRepに委任が集中しガバナンスに歪みが生じる可能性は払拭できないと言えます。
分散化の基本は「trust no one (誰も信用するな)」
「CIP-1694」は、「次世代の民主主義」を実現するための社会実験として、非常に面白い試みだと思います。しかし、どのような仕組みであろうと、民主主義は人が主役であり、主役が人である限り常にミスが起きるリスクが伴います。
どのような民主主義体制であっても、人間の判断が最大のリスクである以上、常に自戒と監視が必要であることを肝に銘じておく必要があります。
つまり「流動民主主義は、代議制民主主義よりマシだが、やはり民主主義である以上、最低の政治形態である」という態度を忘れてはいけません。
暗号通貨において「trust no one(誰も信用するな)」が鉄則ですが、これは分散型投票でも同じです。
脳死で賛同するのでなく、「この仕組みに問題はないか」「より良い改善案はないだろうか」という批判的な態度こそ、カルダノを世界で最も分散化されたネットワークとして機能する最大要素であることを皆さんと共有し、本記事を終えたいと思います。
(了)
本稿はカルダノステークプール「CoffeePool☕️」「CardanoKissa☕️」が作成しました。
COFFEの活動を応援いただける方はぜひ、委任(デリゲート)のご検討をお願いいたします😊
TickerまたはPoolIDをクリック(タップ)するとコピーできます。
NAME:CardanoKissa☕️
Ticker:KISSA
[KISSA] CardanoKissa
pool1lugxr82p89qm35spzwccle405t5dfdznhrasyrtr2cyv2vyfud6
————————————————–
NAME:CoffeePool☕️
Ticker:COFFE
[COFFE] CoffeePool️
pool1r55hyfrd3tw6nzpkvf4rfceh2f04yph92fc462phnd0akp2s5r6
————————————————–
🗳️「DRep ID」もぜひご検討ください!(クリックでコピーできます↓)
DRep NAME : hix_coffeepool
【新IDの場合はこちら↓】
drep1ygnh2uf4wkc8ldgfxwz7rzuga3m8jtqew9xh5g3n587mg6g3ge0sj
【旧IDの場合はこちら↓】
drep1ya6hzdt4kplm2zfnshschz8vweujcxt3f4azyvaplk6xjyw262e
初心者でも長期ホルダーでも、楽しくカルダノ について語り合える discordスペースを作りました😊☕️
・なりすましやscam対策のためXアカウント認証で運営😊
・初心者ホルダーさん大歓迎!☕️
SPOも続々参加しています! ぜひお気軽にお立ち寄りください。
参加方法は☟
discord.gg/TNy7QNua7c